『WF20』逆ギレの中止発表

以前に書いた例のWF20がどうやら開催中止のはこびとなり、ついてはその発表を今月発売のホビージャパン誌上で行っているらしいと某所で知って、なんだ海洋堂にも最後の良心があったんじゃないかと胸を撫で下ろしつつリリースに目を通してみて唖然とした

長文だがまずは以下の全文を読んで欲しい。

ワンダーフェスティバル(以下WF)2005[冬]の会場にて開催の旨を発表し、WF2005[夏]の公式ガイドブックや雑誌広告にて告知させていただいておりましたWF生誕20周年記念イベント『WF20』ですが、8月31日をもちまして締め切らせていただいた選抜ガレージキットディーラー様の参加申込状況が思わしくなく、我々がイベント実施への自己規約として設定していた「80件」という申込数には遠く及びませんでした。その事実を公にすることなく、しらっと二次募集、三次募集をかけ、イベントとしての規模と体裁を保つことも可能だとは思いましたが、関係者一同にて協議を重ねたところ、「イベントを成立させること自体が目的化してしまうぐらいならば思い切って開催を中止した方がよい」という結論へ至ったことをここにご報告させていただきたく思います。元より「まずガレージキット物販ありき」で企画したイベントではありませんが、「歴戦の勇士たる、WF参加経験豊富なディーラーの皆様方に参加していただいてこそのイベント」としてプランニングを進めてきた以上、「このまま力ずくで開催しても、おそらくは誰も幸福にならない」と判断したがゆえの結果です。

すでに参加申込書をご提出いただいているディーラーの皆様と一般参加者の皆様、当イベントへの出演を快諾していただいたゲストの皆様には、お手数、ご面倒お掛けした上でこのような結果となり、誠に申し訳ございませんでした。なかでも、当イベントの趣旨に賛同していただいた43件のディーラー様には、結果的に最もご迷惑をおかけし、また、最も落胆させてしまったことを深くお詫び申し上げたいと思います。

『WF20』のプランニングは今から遡ることちょうど2年前、’03年9月にスタートしたのですが、最初の難関にして最大の難関は、「どういった形式のイベントがWF生誕20周年記念に相応しいのか? どういった形式のイベントならば、多くの戦友や同志によろこばれるのか?」という、イベント形式の確定でした。この件に関し複数の関係者にヒアリングを重ねたところ、「せっかくの特別な場なのだから、レギュラーのWFと大差ない、ガレージキット物販を主体に据えたイベントでは意味がない」「WFの歴史を深く知る人たちと、近年になってからWFに参加しはじめた人たち(当日版権システム成立への過程や、同システムが有する危うさなどを知らない人たち)とのあいだに存在する意識のギャップを埋めるような場であってほしい」「売買一辺倒になってしまった近年のWFとは異なる、浜松町開催時代の初期WFのような、物欲とコミュニケーションを等価に捉えた場が望ましい」という声が数多く聞かれたため、そうした結果から導き出されたのが、「非物販コンテンツの重視」「ガレージキット物販参加ディーラーの選抜(招待)制」「深いコミュニケーションを育む一泊二日開催」というイベント形式であったわけです。

こうした、これまでのガレージキット系イベントには存在しなかったスタイルを採用した時点で、皆様が少なからず違和感を覚え、それ相応の反発を生むであろうことももちろん承知の上でした。しかし、結果から言うと、反発云々というよりも、「この程度の規模のイベントでは物販の売り上げでディーラー参加費を回収できない」「出店ディーラーが100件程度では1万円を超える参加費を払う気になれない」というガレージキット物販に関する声ばかり聞こえてきたのが現実であり、「非物販コンテンツの重視」という我々の開催主旨をご理解いただけなかったのは、広報活動の不足もあるのでしょうが、誠に残念でなりません。我々の意図したものは、「高い参加費を払った人しか参加できない閉ざされた空間で新製品をバンバン売り買いしましょう!」というものではなく、「まずはいつもの売り買いをコミュニケーションの入り口にして、WF20周年についての話をしに来てください。損得勘定とは別次元の、日常的には絶対にありえない濃い一夜をいっしょに過ごしましょう」というところにあり、その旨は、『WF20』開催発表直後から機あるごとに明確に謳い続けてきたつもりでいたのですが…。

何にせよ、高額な参加費を頂戴しながら、ガレージキット物販を最重視した参加者の皆様における過大な期待を裏切るような結果を招くよりは、そうした「誤解から生ずるトラブル」を回避し、早い段階で潔く開催中止を決定してご報告申し上げることが主催者の責務と考え、ここに発表させていただくこととなった次第です。

『WF20』につきましてはこのような結果となりましたが、レギュラーのWFにつきましては、これまでと同様の「ガレージキット物販最重視」という形での開催を続けていく所存でございますので、皆様方により一層のご支援とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

よくもまあ言ってのけるもんだと感心した。あまりにあんまりなんで片っ端から文言を検証していきたい。

元より「まずガレージキット物販ありき」で企画したイベントではありませんが、「歴戦の勇士たる、WF参加経験豊富なディーラーの皆様方に参加していただいてこそのイベント」としてプランニングを進めてきた以上、「このまま力ずくで開催しても、おそらくは誰も幸福にならない」と判断したがゆえの結果です。

まあ現状で幸福になれるのはイベンターだけだからここについてはその通りだとは思うが、ひとたびパーティを開くと発表した以上は招いたゲスト全員に幸せな気分を味わわせるために粉骨砕身の努力をするのが主催者の義務なのであって、簡単にそれを取り下げるのは結局『自分の都合』でしかないことがわかってるんだろうか。

っていうかさ、すでに申し込んでた参加者、特に一般参加者はホントに『元より「まずガレージキット物販ありき」で企画したイベントでは』ないことを理解せずにいるわけ?一人あたり25000円+旅費も支払う金があったらペアで二泊三日の温泉旅行するよ?その温泉旅行だってどこの旅館にするかとか事前にいろんな情報集めてよっく吟味すると思うんだが。
どっちかっていうとディーラーが規定数を大きく下回った事実よりも一般参加者がだーれもいなくなりそうな申込状況の方が痛かったんじゃねえのかね。

そもそもヒアリングとやらはどの辺の人間に対して行ったんだろう。

「せっかくの特別な場なのだから、レギュラーのWFと大差ない、ガレージキット物販を主体に据えたイベントでは意味がない」「WFの歴史を深く知る人たちと、近年になってからWFに参加しはじめた人たち(当日版権システム成立への過程や、同システムが有する危うさなどを知らない人たち)とのあいだに存在する意識のギャップを埋めるような場であってほしい」「売買一辺倒になってしまった近年のWFとは異なる、浜松町開催時代の初期WFのような、物欲とコミュニケーションを等価に捉えた場が望ましい」という声が数多く聞かれ

なんでもいいからハク付けたい主催側の人間とネット弁慶ウゼエと思ってるライターと懐古主義者のお三方ですか?

このうちの一つだけ、確かに当日版権というシステムはいろいろ問題はあれど最終的には企業側の温情があってこそ成立しているものなのであって要するに『言いたいことあるのはわかるけどとりあえずお前らもうちょっと大人になれ』と一喝したい気持ちはわかる。だがそれは―しょせん理想論ではあるが―参加者一人ひとりが自発的にコンセンサスをとっていくべきものであって、企業的な都合が何層にも干渉する主催者側がお仕着せすべきものでは決してねえだろう。

だから海洋堂としては常に正しい道を進み続ける以外に起こせるアクションなんてねえのだ。主催者が思想統制を行ってなお発展するイベントなんてありえねえのだ。どうも海洋堂には基本的にここの理念がすっぽり抜けてるように思えてならん。

しかし、結果から言うと、反発云々というよりも、「この程度の規模のイベントでは物販の売り上げでディーラー参加費を回収できない」「出店ディーラーが100件程度では1万円を超える参加費を払う気になれない」というガレージキット物販に関する声ばかり聞こえてきたのが現実であり

ソースがねえのだがこれはつまり招待に応じなかったディーラーから実際に寄せられた意見なんだろうか。
だって当たり前だろ
前の記事でも書いたように、本気で参加して欲しいと思ってるなら少なくともディーラーの宿泊費ぐらいは主催者側で持ってやるのがスジってもんである。商業原型師としてバリバリやっている人にとってもやはり9万円という金額は法外なのだ。参加者にだけ「損得勘定とは別次元」なスタンスを強要しておきながら自分の懐が痛む行動には一切出ようとしねえ、そんな強突張りが主催するパーティに出て一体どうやって楽しめというのか。

そしてそれを差し引いてもこの物言いはディーラーを侮辱しているとしか思えねえ。今回のリリースで最も問題視すべきパラグラフである。

ディーラー側になぜ主催の意図するところが通らなかった、そこにはまずディーラーがなぜ物販による『アガリ』を重視するかの理由があるからに他ならない。

現在のガレキ、フィギュアは基本的に多くても100体~200体の少量生産であるが、これは当日版権のシステム的に版権元から製造の上限を指定されるからであって、早く原型が完成したり複製業者を利用したからといって単純に倍増するわけではなくいわば「行き渡らせたくてもそれが許されない」ジレンマがディーラー側にはある。万単位の動員が当たり前となっているWFともなれば数さえ用意できれば1000体を売り上げることさえ不可能ではない実力を持ったディーラーであっても、だ。
言うまでもなくガレキを組み立て塗装するにはスキルはともかくそれなりの時間、根気を要する。実際に売れたキットの内の何割が完成まで辿り着いているかと考えると、希望的観測含めせいぜいが2割程度なのではないかとさえ思える。
だからディーラーにとっては自分が制作したキットが購入者の手によって組み上げられている様子を見ることこそが最高の喜びだろうし、1人でも多くの人にパーツ状態ではない『完成形』に触れて欲しいと願っているに違いない。それら多くて100体~200体のキットの内で『ちゃんと組み上げられた』キットがせいぜい2割として、それをネット上などで発表したり原型制作者へ写真を送ったりしている人ともなるとさらにその内の2割もいるかいないかではないだろうか。この数字はあくまで憶測でしかないが、もしもこの数字が正しければ100体作って完売してもリアクションが2~3件あれば御の字ということになってしまう。

『翔子』を通じて何人かの原型師の人々と言葉を交わす機会に恵まれたが、彼らディーラー諸氏はそういった「受け手のリアクション」に非常に渇望しているという印象を強く受けた。比較的感想を得ることが容易な同人誌においてさえそのリアクション率は決して高くはない現実を知っている分(まあ感想を述べるほどもないマンガばかり垂れ流してるせいも多分にあるんだが)余計にその飢餓感は伝わってきた気がする。

モノ作りをする人というのは基本的に自己顕示欲のカタマリである。だから受け手からのリアクションがないというのは彼らにとって死活問題である。世間における自分の現在の評価に関して「リアクション」で満たしきれない心を埋めるために売り上げという何よりも正直な「数字」を重視することを果たして誰が責められようか

参加を辞退したディーラーにとってはその正直な数字こそが現状海洋堂からの招待状よりも自分を正しく満たしてくれるものである、ただそれだけのことである。

そしてイヤミともつかない最後ッ屁。
むしろ損得勘定を棚上げして参加に踏み切ってくださった43ディーラーのためにも再度募集かけて開催して、その上で「迷ったけど参加してよかったよ」と言われるぐらいのイベントにしてみせることこそが主催の面目躍如なんじゃねえのか。何度でも言うが今回の結果を招いたのはひとえに主催者側の身勝手な都合と企業体質としての不完全さにこそその根源があるのであって、参加予定だったディーラーにも辞退したディーラーにも一切の非はない。参加費実費の誕生パーティーを盛大にスルーされたスネ夫が逆ギレしてるだけです。だいたいガレキイベントをガレキ実物で語らなくてどうするんだろう。26000円も払って何が悲しくて会社の御託を拝聴しなきゃならんのか。参加者は海洋堂の広告塔じゃねえんですよ。
でもスネ夫がいねえとWFなくなっちゃうからなあ。ってかこれでまたリセットとか言いだしませんように。

※06/3/20追記
06年3月19日に新宿ロフトプラスワンで開催された『WF☆20』を見てきました。
その記事の編集にともないこのエントリも『WF20』カテゴリの中にまとめます。
カテゴリ:WF20とワンフェス☆ニジュウ

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