宝島Z

25日にカプコンから発売されたWii用ソフト『宝島Z』をついさっきクリアしましたヽ(`Д´)ノ

振ったり回したり叩いたり、「Wiiリモコンをフルに使った謎解き」という発売前の情報からけっこう気になってたんですが、なかなか期待を上回る出来の良作であります。
実はWii用で初めて買うサードパーティ製ソフト。本体発売から約1年を経てようやく任天堂のクオリティに匹敵するゲームが出たかなあという感じ。

各ステージは小さな箱庭状になっていて、そこに配置されたオブジェクトを利用してゴール地点にある宝箱を開くとステージクリア。基本的にステージは初プレイでも30分~1時間程度(簡単なステージなら初見でも10分程度)もあればクリアできるようになっているので「謎解きは好きだけどまとまった時間が取れないから最近のゼルダとかはちょっと…」みたいな人でも気楽に遊べると思います。
オブジェクトに対するWiiリモコンの扱い方もレバーなら「リモコンを立てて手前に引く」、壺を放り投げるなら「リモコンを横に持って上に放り上げる」ようなアクションをするってことで『おどるメイドインワリオ』的なものがほとんど。っつか全部かも。
謎解きの難易度は高低織り交ぜて用意されていて基本的にはノーヒントってのも結構ゼルダに近い感覚ですが、決定的に違うのが「ヒントをお金で買える」こと。ヒント一つに支払う代金はだんだんと高くなっていきますが、一度クリアしたステージで何度もお金を稼ぐことはできるのでよっぽどのことがない限りハマってしまうことはないでしょう(それでも「どこから手をつけたものかわからなくて途方に暮れる」って感じの絶望感を味わえるステージもあるにはあるけど)。
むしろなまじ金でヒントが買えてしまうぶん自力でクリアできなかった時の敗北感は強いです。負けず嫌いな人ほどハマるゲームかもしれない。

一番おおっと思ったというか嬉しかったのは『ワリオ』以来やっと「電話の受話器」に見立てたアクションがゲーム性を伴って現れてくれたことであります。個人的にこの電話のアクションはWii発売前から妄想してた見立てでして、たとえば推理ADVなんかでも「実際にリモコンに電話がかかってきて手がかりが聞こえてくる」ってな感じの使い方なんかもできるよなあ、どっかやんないかなあと思ってたんですな。
謎解きのウエイトとしてはさほど大きくもないんですがワリオの「とれ!」から遂にワンステップ進んだなあと感慨ひとしおでした。

2周目でしか現れない謎解きやそれに伴う財宝もほぼ全てのステージに用意されていて(これがまたどれも相当に難しい)やりごたえは充分でしょう。

惜しむらくは、プレイヤーの移動方法が行きたい場所をポイントして誘導するセミオート方式なため一部のボス戦などシビアなタイミングを要求される局面で勝手にまごついてミスしてしまう点。この手のゲームで自分の責任の範囲外でミス扱いにされてしまうのはかなりのストレスなので、この辺はもう少し丁寧にチューニングして欲しかったところ。

それともう一つ、これはゲームの世界観全体に関してですが…ぶっちゃけもう少しぐらい売れる要素を取り込んだガワにした方が売上はいいんじゃないかと

ステージクリア方式には「短い時間で楽しめる」というメリットがある反面、ステージをクリアしてしまうと「プレイヤーのテンションがそこで一旦リセットされてしまう」デメリットがあるわけです。でそのテンションをつなぎ止めるため世のアクションアドベンチャーでは一貫したストーリーを配置してるんですが、この『宝島Z』にはそういったストーリーめいたものがほとんどないに等しく、結果としてプレイヤーの目的意識が「次のギミックに取り組む」1点のみに頼ることとなり、楽しいんだけどなんだか冗長という不思議な感覚に捕らわれてしまいます。
確かに良い仕掛けを用意すればプレイした人はその仕掛けを楽しめるけど、たぶん仕掛けだけで「心に残る」ってほどの感覚は得られないと思うんですよ。そこへ至るまでに何らかの感情移入させるイベントが組み込まれていれば「仕掛けを解く楽しさ」に「ストーリーを進める楽しさ」が相乗効果として付加され、そこで初めてその仕掛けが「心に残る」んじゃないかなあと。登場キャラもそこそこいるんだから彼らも積極的にストーリーに絡んでいけばよかったのになあと。

そもそも作劇術的に言って「海賊」というモチーフは主人公の目的意識に対して観客が非常に感情移入しにくいんですよ。だから海賊を主人公にするだけで相当にハンデ背負ってるんです。そこへきてこのストーリーのなさたるや、最近のイベントムービー垂れ流しに辟易したゲーマーでさえ「いや…せめてもうちょっと物語性を…(;´Д`)」とヒいちゃいそうなほどの極端さ。いっそ潔いと言うべきなのか…。

カプコンと言えばかつてGCで名作ガチャフォースを生み出したメーカーでもあるわけですが、そのガチャフォースがもうひとつパッとしなかった理由も本作と同じくギミックとコレクト要素のみをプレイヤーのモチベーションに据えるという「ゲームのコアだけ用意してストーリーをおざなりにする」作風にあったと言って間違いないと思います。
カプコンにはゲーム性とストーリー性を両立したいいゲームも沢山あるんだからできないことじゃないと思うんだけど…ほんとにコアの出来がいいだけによけい残念。ボイスの使い方もガチャフォース同様で、ウインドウにセリフが表示された状態で「うひょ♪」とか「ヘイ!」とか「むきーーーー!!」とか一言しゃべるだけ。今時こりゃさすがに通用しないですよ。
『宝島Z』ってタイトルも棚に並んでて興味を惹くものとは思えないし(どうやらZは主人公ザックの頭文字らしい…わかるかーヽ(`Д´)ノ!!)…っつかこれって開発段階での仮題まんまなんですが(;´Д`)
某所で見かけた「風のタクト外伝テトラの冒険とでもしておけばミリオン行ったはず」的な評価が身も蓋もないけど端的に物語っている気がしました(つД`)

そんなこんなでお化粧は色々失敗してる本作ですがその代わりというかゲームのキモはがっつり作り込んであります。ストーリーにも注力されていれば文句なしに90点あげてたところですが、まあそういうわけで78点としときますか。

クリアしたあと遅い夕食をとろうと近所のすき家まで自転車で向かう途中ものすごい千鳥足のおっさんに出くわして「今ここでベル鳴らしたらこのおっさん絶対ブロックになるよな…んですっぽり収まるサイズの穴がこの近くにあるに違いない…」とか考えてたら笑いを堪えるのに必死でした。

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